アル・ファラビのそろばんに蛍がとまる
私の作品の多くは、蓄音機、電話、ラジオなど、音の視覚化とそれを取り巻くメディアテクノロジーをテーマとしています。
今回の「アル・ファラビのそろばんに蛍がとまる」は、ピタゴラスの時代から音や音楽、宇宙の神秘を研究し説明するために使われてきた最古の音楽理論装置「モノコード」を視覚化したものです。モノコードは本来、振動する弦をさまざまな割合で分割して音階の異なる音を鳴らすもので、ギターの弦を短くすると高い音が鳴るのと同じである。その長さの比率を測ることで、音楽の適切な調律比率を見出すことができる。10世紀のペルシャの数学者アル・ファラービは、17音の音階を1本の長い弦の分割によって導き出したという偉業を成し遂げた。
私のインスタレーションでは、1本の非常に長いミュージックワイヤーを非常に低い周波数で振動させる。その流れや乱れの中に、無数の部分的な振動が含まれている。モノフィラメントの小さな輪が何本もワイヤーの上で踊り、それぞれが絶え間なく調和ノード、つまり理論的な安定点を求めている。いわば、ワイヤーは自分自身のハーモニックスを計算するための機械なのだ。しかし、他のループが動いたりずれたりするたびに、もろい調和バランスが崩れるため、実際には安住の地は存在しない。ループは線材に軽く触れているため、2つのループの間で特定のハーモニクスを示す接線として機能し、線材の音に多くのハーモニクス要素を生じさせる。これらの音はコンタクトマイクで拾われ、ラウドスピーカーに送られます。ループが踊りながら、緑色のレーザー光線と交差して光り、空間の振動のパターンを私たちの目に見せてくれる。平衡はなく、変化のみであり、調和は心の中にしか存在し得ない秩序を示すヒントに過ぎない。このような真理は、古代の哲学者たちが、夜の闇にまぎれて、数学者のモノコードに光る昆虫が儀式を行うときに明らかにされるのだろうと想像している。
機械による自動翻訳